5人が本棚に入れています
本棚に追加
君の様子がおかしい…。
嫌な予感がする。
まだ君の歌聞いてられるよね?
―*―
『ふぅ…今日は遅刻せんですんだのぅ、桜花は…居るじゃろうか…?』
稚兎瀬は、早く桜花に逢いたいと丘まで小走りで行く。
すると、今朝はとても綺麗に咲いていた桜が少し散っていた。
「あ…稚、兎瀬?…来てくれたんだね…、桜…散ってきちゃった…。」
稚兎瀬の声に気付き、桜花はゆっくり桜の後ろから顔を覗かせた。
桜花の様子がおかしい事に気付いた稚兎瀬は、急いで駆け寄る。
『…どうした?息が…呼吸ちゃんと出来てないんか?…立てるか?』
桜花は辛そうな顔をした上、肩で息をしている。
「…ごめん、…立てない、…もう…無理、みたい…最期だ、と思うから…、聞いてくれる?」
桜花がゆっくり紡ぎ出す言葉に静かに耳を傾け、稚兎瀬は言った。
『最期…?何を言っとるんじゃ…?話しは聞いちゃる…ゆっくりで良いから…今日は桜花に付き合っちゃるよ』
稚兎瀬は問いただしたい衝動を抑えながら聞く体勢を取る。
「ありがとう、あのね…私、大学生じゃ…ないの、…いや元…大学生…なの。…事故で…もう…でもね、事故に合う…前に…稚兎…瀬を見付けたんだ、私…一目惚れした…んだ、よ…だから…初めて、逢った時…びっくりしちゃっ、たの…歌…褒めてくれた、時…嬉しかった…運命かと…思った、よ。多分…稚…兎瀬が、桜が、好き、…だったから、戻ってこれた、んだと思う…卒業まで、稚兎、瀬が卒業…する、まで…この桜…守りたかった…桜に…私の元気を…あげて雨に濡れない…様に、したんだ…だけど…私が…弱っちゃ…ったから桜に…影響しちゃっ、たみたい…」
桜花の口から出た言葉に、稚兎瀬は驚きを隠せず口をパクパクとさせた。
だが、まだ桜花が何かを言おうとしている事に気付き、桜花の口元に耳を持っていくと、桜花はこう呟いた。
「…ちとせ…大好き、…だよ…」
稚兎瀬はその言葉を聞いた途端に、桜花を抱き締めた。
最初のコメントを投稿しよう!