4.終わりと、それから

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せっかく気持ちが通じたのに…。 君はもう居なくて…。 ―*― 稚兎瀬は倒れて病院に運ばれた後次の日退院の筈が、一週間も延期したのだ。 入院している間、稚兎瀬はご飯を食べずずっと外を眺めていた。 いくら食べなさいと言っても聞かない稚兎瀬に看護婦は、点滴に変えてくれた。 暫く外を眺めると、必ず涙が流れた。 何も考えてないはずなのに、止めどなく流れる涙。 稚兎瀬にはどうする事も出来なかった。 『桜花…今何しとるんじゃろうか』 呟く言葉はいつも桜花の事で、看護婦が『彼女さんですか?』と聞くと稚兎瀬は曖昧な返事をした。 『まぁ…彼女みたいなモンです…もう居らんけど…』 その言葉で看護婦は『ごめんなさい…』と答えて、部屋を後にした。 「…どうしたの?稚兎瀬らしくないよ?…元気出して?」 急にドアの方から聞き覚えのある声がして、ドアの方を見ると。 『なっ…なんで…』 「せっかく稚兎瀬に逢いに来たのに…酷い言い様ね」 いつもの笑顔で桜花が立っていたのだ。 稚兎瀬が点滴を外して駆け寄ろうとすると、桜花が怒った。 「稚兎瀬!点滴外したら…帰るからね?私が、そっちに行くから。」 桜花はクスクス笑いながら、ゆっくり稚兎瀬のベッド近寄った。 『なんで…?ホントに桜花なんか?喋り方も普通じゃし…』 稚兎瀬は桜花をマジマジと見つめた。 桜花は稚兎瀬の態度に顔を膨らませるとこう言った。 「…稚兎瀬を、叱りにきたのよ…少ししか、居れないよ…」 桜花は悲しそうに呟いた後に続けて言った。 「看護婦さんを、困らせたらダメでしょ?私が…居なくなった事に、胸を痛めてくれるのは…嬉しいけど、ちゃんと自分でご飯を食べる、ずっと外眺めてても意味ないでしょ?…私が好きになった稚兎瀬は、笑顔で景色を愛しそうに眺めてる子だよ、ぼーっとしてる稚兎瀬は嫌。」 稚兎瀬はその言葉を聞くと、桜花に向かって微笑んだ。 『そう、じゃな…俺らしくないか、桜花に嫌われるのは悲しいからのぅ…俺らしくする』 稚兎瀬の言葉に安心した桜花は、「なら良かった、そろそろ行くね…」と言った後に呟いた。 「私はいつも見てるから…大丈夫だよ?」
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