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君の歌声は皆の心を癒してくれる。
君の歌声は皆が足を止め聞き入ってしまう。
俺はそんな君の歌声に惹かれたんだ。
―*―
「君…学生だよね…?」
稚兎瀬はその一言を聞き驚いた。
驚いた理由は簡単だ。
少女の容姿は、何もかもを見透かした様な目をしており、髪は腰まで長く風に遊ばれている。
容姿端麗という部類に入る様な少女で、桜の木の上に座っているせいか身長まではわからないが、稚兎瀬より低いと思われる。
そんな少女に、「学生だよね?」等と聞かれて驚かない人が居るならばお目にかかりたい。
『…確かに俺は学生じゃが…お前も学生なんじゃなか?』
稚兎瀬は少女の容姿をマジマジと見ながら肯定し、質問し返す。
「私は…確かに学生だけど、一応大学生…だから」
驚かずには居れないだろう、稚兎瀬は最早(もはや)開いた口が塞がらないと言った状態である。
自分より背の低そうな、年下であろう少女がまさか年上だとは想像も出来ないだろう。
“人は外見で判断するな”
その言葉が今はしっかり理解出来る。
『…ホントに大学生なんか?…てっきり俺は小学生か中学生かと…』
驚きを隠せないまま正直に、思った事を伝えると。
少女はクスクス笑って「大丈夫よ」と言葉を紡いだ。
「自分の容姿は…自分が良く分かって…居るから間違われる事…あるから気にしないで…君…高校生?」
優しく諭す様な物言いに、稚兎瀬は不満げに言った。
『そうじゃけど?…ついでに言うと、俺は“君”じゃなくて名前があるきに。壱愧 稚兎瀬っちゅう名前がな。』
「壱愧君ね…私は歌姫 桜花(ウタヒメ オウカ)って言うわ…よろしくね?」
そう言って少女…基(もとい)桜花は微笑んでくる。
それが俺と、桜花の出会いだった。
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