2.彼女-歌姫 桜花-

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彼女の歌は、心に負った傷を癒してくれる。 彼女の歌は安らぎをくれる。 ―*― 「君…桜が好きなの?」 急に桜花に言われた言葉に稚兎瀬は驚き目を見開いた。 『なんでそう思うんじゃ?』 稚兎瀬は思った事を素直に聞いた。 「ん…なんとなく、景色を見る目が…愛しそうだった…から」 桜花は相変わらず木の上に座ったまま、稚兎瀬を見下ろす状態でいる。 話しづらいのは気にしないのか普通だが、稚兎瀬は見上げる為、首が痛くて仕方がない。 『そうか…一つ言っても良いかのぅ?…桜花さんが木の上に居る状態じゃと、俺の首が痛くなるんじゃが…。』 稚兎瀬は思った事を言うと、桜花はとても申し訳なさそうに謝った。 「ごめんなさい…そこ、少し…退いてもらえますか?」 桜花が急にそんな事を言い出す為、素直に退くと。 ―シュタッ なんと木の上から飛び降りてきたのだ。 『おいッ!お前女じゃろ?!普通男が居る前で飛び降りんじゃろ!!つか、危ないじゃろ!怪我したらどうする気なんじゃ!!』 稚兎瀬が怒鳴った事に桜花は驚くと、急にクスクスと笑い始めた。 「なんか…お父さんみたいな反応…大丈夫だよ、怪我する事…ないし、女だって思われないから」 桜花は素直な感想を述べると思い出したかの様に聞いた。 「壱愧君…学校行かなくて良いの?」 その一言で稚兎瀬の顔は青ざめ、『やべっ…遅刻じゃ…』と呟いたかと思うと走り去っていった。 「大丈夫かな?…またおいで、私はいつもここに居るから」 稚兎瀬の背に呟く桜花は何処となく寂しそうで、静かに歌い始めた。
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