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彼女の歌は、心に負った傷を癒してくれる。
彼女の歌は安らぎをくれる。
―*―
「君…桜が好きなの?」
急に桜花に言われた言葉に稚兎瀬は驚き目を見開いた。
『なんでそう思うんじゃ?』
稚兎瀬は思った事を素直に聞いた。
「ん…なんとなく、景色を見る目が…愛しそうだった…から」
桜花は相変わらず木の上に座ったまま、稚兎瀬を見下ろす状態でいる。
話しづらいのは気にしないのか普通だが、稚兎瀬は見上げる為、首が痛くて仕方がない。
『そうか…一つ言っても良いかのぅ?…桜花さんが木の上に居る状態じゃと、俺の首が痛くなるんじゃが…。』
稚兎瀬は思った事を言うと、桜花はとても申し訳なさそうに謝った。
「ごめんなさい…そこ、少し…退いてもらえますか?」
桜花が急にそんな事を言い出す為、素直に退くと。
―シュタッ
なんと木の上から飛び降りてきたのだ。
『おいッ!お前女じゃろ?!普通男が居る前で飛び降りんじゃろ!!つか、危ないじゃろ!怪我したらどうする気なんじゃ!!』
稚兎瀬が怒鳴った事に桜花は驚くと、急にクスクスと笑い始めた。
「なんか…お父さんみたいな反応…大丈夫だよ、怪我する事…ないし、女だって思われないから」
桜花は素直な感想を述べると思い出したかの様に聞いた。
「壱愧君…学校行かなくて良いの?」
その一言で稚兎瀬の顔は青ざめ、『やべっ…遅刻じゃ…』と呟いたかと思うと走り去っていった。
「大丈夫かな?…またおいで、私はいつもここに居るから」
稚兎瀬の背に呟く桜花は何処となく寂しそうで、静かに歌い始めた。
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