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いつも歌っている君の姿は輝いていて。
いつも歌っている君は笑顔で。
見ていると和むんだ。
―*―
『今朝遅刻したせいで…掃除させられるわ、説教で3時間とか普通有り得んじゃろ…足が痛いのぅ。』
稚兎瀬が愚痴りながら、今朝の丘の上に足を進めると。
「色々…お仕置された…みたいだね…壱愧君」
高い位置から聞こえた声に稚兎瀬が上を見上げると、桜花がまた桜の木の上に座ってこちらを見ていた。
『なんじゃ…桜花さんか、またその桜に座っとるな…今朝もその桜じゃなかったか?』
稚兎瀬は俯き、疲れた様に呟くと、桜花はまた木から飛び降りて稚兎瀬の顔を覗き込んでこう言った。
「ごめんなさい…私が今朝話し掛けなきゃ…遅刻しなかったよね」
稚兎瀬はいきなりの謝罪に顔をあげると、申し訳なさそうに俯いた桜花が立っていた。
『気にせんでよか…俺が歌に惹かれただけじゃから…。桜花さんのせいじゃないきに。』
稚兎瀬が素直に思った事を述べると、桜花は「ありがとう」と言い笑ったのだ。
「あ…そうだ、壱愧君…私の事さん付けに…しなくて良いよ?呼び捨てで構わない…から」
桜花が思い出したかの様に稚兎瀬に言うと、稚兎瀬は『なら、俺ん事も稚兎瀬でよかよ』と答えた。
「ありがとう…稚兎瀬は、なんで…またこの丘に来たの?」
桜花が思った事を聞くと、稚兎瀬は少し考えて答えた。
『桜花の歌が聞きたかったからじゃよ、俺も質問してええかのぅ?』
稚兎瀬の言葉に驚いた桜花は少し悲しそうな表情をした後に「何…?」と聞くと。
『桜花は大学生なんじゃろ?今朝急ぐ素振りも見せんかったけん…不登校なんじゃろうかと思ってな』
稚兎瀬の質問に目を伏せる桜花。
桜花の様子に稚兎瀬は“マズい事を聞いたか…?”と焦ったが、桜花は笑顔でこう答えた。
「…今日は、お休みなんだ…だから私の好きな【歌】を綺麗な【桜】が咲いてるここで歌って過ごしてたの」
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