2.彼女-歌姫 桜花-

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素敵な歌に足を止める。 耳を傾ける、心に残る。 歌を聞くと落ち着ける。 ―*― 『今日も良い天気じゃのぅ…雨が降ったら、桜も終わりじゃな』 翌日、稚兎瀬はまた丘の上に足を進めていた。 昨日の失敗を考え、家を早く出たのだ。 「ん…おは、よう…早いね、稚兎瀬」 稚兎瀬の声に気付いたのか、桜花が起き上がる。 『え?…なんでそこに寝とるんじゃ?!風邪引いたらどうする!!家に帰らんかったんか?!』 稚兎瀬はまだ居ないだろうと思っていた人の声が聞こえた為、辺りを見渡し居ないと思って桜の木の裏側に回ると、起き上がってこちらを見ている桜花が居たのだ。 稚兎瀬は大慌てで駆け寄ると、着ていた学ランを桜花の肩にかけた。 「ん…家?あるよ…まぁ私の事は気にしないで、大丈夫だから。学ラン…稚兎瀬が寒いでしょう?」 桜花は眠り足りないのか、欠伸(あくび)をしながら稚兎瀬に学ランを返そうとした。 『俺は寒くない、気にしないとか無理じゃろ?…こんな寒い場所に寝とる癖に』 稚兎瀬は返そうとしてくる桜花の後ろに回り込み、学ランをかけなおし抱き締めた。 「…!?稚…兎、瀬?…どうした、の?」 桜花は最初驚きはしたものの、払いのける事はせずゆっくり問い掛けた。 『…寒そうじゃったから、学ラン返されん様に…と思ってな』 稚兎瀬は暫く無言のままだったが、桜花の問いに答えた。 「そっ、か…ありがとう、人の体温って…凄く、温かいね」 桜花は稚兎瀬の言葉にお礼を言うと、稚兎瀬は『…気にせんでよか、俺が勝手にしちょるだけやき。』と返した。
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