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素敵な歌に足を止める。
耳を傾ける、心に残る。
歌を聞くと落ち着ける。
―*―
『今日も良い天気じゃのぅ…雨が降ったら、桜も終わりじゃな』
翌日、稚兎瀬はまた丘の上に足を進めていた。
昨日の失敗を考え、家を早く出たのだ。
「ん…おは、よう…早いね、稚兎瀬」
稚兎瀬の声に気付いたのか、桜花が起き上がる。
『え?…なんでそこに寝とるんじゃ?!風邪引いたらどうする!!家に帰らんかったんか?!』
稚兎瀬はまだ居ないだろうと思っていた人の声が聞こえた為、辺りを見渡し居ないと思って桜の木の裏側に回ると、起き上がってこちらを見ている桜花が居たのだ。
稚兎瀬は大慌てで駆け寄ると、着ていた学ランを桜花の肩にかけた。
「ん…家?あるよ…まぁ私の事は気にしないで、大丈夫だから。学ラン…稚兎瀬が寒いでしょう?」
桜花は眠り足りないのか、欠伸(あくび)をしながら稚兎瀬に学ランを返そうとした。
『俺は寒くない、気にしないとか無理じゃろ?…こんな寒い場所に寝とる癖に』
稚兎瀬は返そうとしてくる桜花の後ろに回り込み、学ランをかけなおし抱き締めた。
「…!?稚…兎、瀬?…どうした、の?」
桜花は最初驚きはしたものの、払いのける事はせずゆっくり問い掛けた。
『…寒そうじゃったから、学ラン返されん様に…と思ってな』
稚兎瀬は暫く無言のままだったが、桜花の問いに答えた。
「そっ、か…ありがとう、人の体温って…凄く、温かいね」
桜花は稚兎瀬の言葉にお礼を言うと、稚兎瀬は『…気にせんでよか、俺が勝手にしちょるだけやき。』と返した。
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