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前述の通り、童顔のせいで人畜無害に見られる彼である。
とは言え、一部では女遊びが好きなスケベ野郎だと信じて疑わない輩もいる。
確かに実際のところ勇貴は手が早いほうかもしれない。…いや、早いほうだ。
しかし、彼は小心者でもあった。イマイチはっきりしない優柔不断な面もわずかだが持ち合わせていた。
それ故、いま一歩、告白に踏み切れないでいるのだが。
「勇貴くーん、郵便だよ」
教室の机に突っ伏せて、ああしたもんかこうしたもんかとあれこれ迷い悩んでいる勇貴の頭上から明るい声が降ってきた。
全く人の気も知らないで…なんて思いながら顔を上げた途端、教室中に響き渡るかと思うくらい凄まじい音で鼓動が高鳴った。
淡いピンクの封筒を勇貴に向かって差し出しているのは、クラスメートの水城紫織。
彼女こそが勇貴少年が目下大恋愛中の相手である!
『勇貴くん』なんて下の名前で呼ばれる仲ならもう恋人同然!と思いきや、単なる友人の間柄というのが悲しい。
「ありがと…」
「3組の春日さんからね。すっごく可愛い子だよね」
紫織が屈託のない笑みを浮かべて言う。勇貴もぎこちなく微笑む。
(明らかに対象外だと思われてる…?)
なんて内心ショックを受けつつ、封筒を裏返す。
なるほど、そこには『2年3組 春日なみ』と書かれている。
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