第一声

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「おーっす!樹(たつき)、誕生日おめでとー」  ――サンキュ~雅志。  彼が来て、メンバーは揃った。  at堀池貴久宅。彼もまだ学生だってのに、高級マンションに一人暮らしだ。 「んじゃぁ、始めようか」  主催者でもある元ア・カペラ同好会会長の堀池が言うと、俺の前にメンバーが並んだ。  そして、元吹奏楽部副部長の佐藤真由美がその場から姿を消した。  照明が落ちる。 「1、2、1・2・3・4」  “Happy birthday to you~ Happy birthday to you~   Happy birthday dear Tatsuki~ Happy birthday to you~♪”  いつの間に練習したのか、綺麗なア・カペラ5部合唱……(ソプラノ・アルト・テノール・バスのコーラス+リードボーカル+ボイスパーカッション)だった。  ――いやぁ、感動モノだね。  火のついた蝋燭が5本立っているワンホールのショートケーキを、佐藤が持ってきた。  ふーーーっ。  大人気なく思いっきり息を吹きかけた。  照明がついた。  パチパチパチパチ……と拍手。  なんか小学生の“お誕生日会”みたいで、照れる。
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