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『せーんせっ。』
今までの、妙な緊張を何とか押さえ込み、
精一杯の笑顔で挨拶をした。
亮ちゃんは一瞬ポカーンとしとったけど、
『あぁ!河口か!なんや久々やな~』
って
すぐにいつもの笑顔を見せてくれた。
『こっちに赴任になってん。四年ぶりの東高や。』
知っとーよ。
今日やって亮ちゃんに会いに来たんやから。
でも、
『うん、遠山先生に会いに来たら佐伯先生の名前、見えたけん』
って言うといた。
『ほんま久々やな~。やっぱ女の子は化粧したら全然雰囲気ちゃうねんな。』
そう言って吸っていたたばこを灰皿に押しつけた。
見ちゃあかんものを見た。
亮ちゃんは
そこへ釘付けになっているあたしの視線に気づいてこう続けた。
『あぁ、結婚してん、二年前。』
そうやねん。
先生の左手には、
シンプルなシルバーのリング。
亮ちゃんが、
誰かのものっていう
証──‥。
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