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昔、この星にはたくさんの生き物と豊かな暮らしがありました。
野営と焚き火の時代で、強い者は優しく、助け合う世界が此処にはありました。
昼と夜が交互に訪れ、人々は昼の太陽と夜の月を神様だと信じていました。
ある年の夜。
空から隕石が落ちてきて、家畜や作物を駄目にしてしまいました。人々は夜の神様がお怒りになっていると畏れました。
そしてそれから、月の満ち欠けが始まったのでした。
今までまんまるだった夜の神様が、日に日に痩せてゆくのを見て、人々はお腹が減っているのだと考えました。だから空から石を降らせて家畜や作物を食べたのだと思ったのです。
そこで、神様に満腹になってもらおうと供物を捧げることにしました。
生きのいい動物や魚、出来のいい作物を。
やがて、供物も尽きてきました。魚も動物ももういません。仕方なく今度は人間を捧げることにしました。
そして・・・。
人間は減り始めたのです。
とうとう、人類は夜の神様によって滅びてしまったのでした。
何もないこの星を、月は「腹が減った、満腹だ」を繰り返しながらまわっています。
今日も月は哀しい星をまわっています。
終
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