かぜニ成る

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「まぁそんなとこだ。とりあえずサンキューな」 はぁ、とヒロはため息を漏らす。 二人は高校一年から同じクラスだった。彰がいればヒロがいる、ヒロがいれば彰がいる。それぐらい仲が良かった。しかし言い争いも少なくない。何かと問題の種をまくのは彰で、それに対してヒロが口を出す。 つまり、喧嘩するほど仲がいいと。 「なんで彰に彼女ができて俺にできないんだよ」 電車を降りてから、同じ制服を着た高校生が一際多くなる。そのなかにまぎれて登校するヒロは、顔が浮かれきっている彰に向かって文句を言った。 「ついに彼女も携帯を買ってさー。今流行りのLOVE定額ってヤツで毎晩話し放題だよなー。家電だと、あっちの親がうるさいらしくてさー」 桜並木道の下でヒロの文句は流され、かわりに彰のノロケ話を聞かされるはめになる。ちなみに、彰が遅れてくる日は大体ノロケ話をしてくる。 「はぁ、高校生活二年目のこの季節…。春らしい劇的な出逢いって無いもんかね」 「あっはっはっ!!ムダムダ!自分で動かないと始まんねぇって」 「嘘つけ。かすりちゃんの方から告白してきたくせに…」 浮かれ顔の親友に睨みをきかせる。が、彰はそれを見ていない。 そのとき、一筋の暖かい風が二人を追い越した。 「うぉぉぉ~う!」 二人は歓喜のあまり声が出た。 幕を降ろされたカーテンが勢いよくそのステージを公開してくれているからだ。 白、黒、ゼブラ…etc。
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