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「かぁ~終わった!」
HR終了の号令がかかった途端、彰は天井高くに向かって伸びをする。
「彰、帰ろうぜ」
クラスメイトは鞄を持ってさっさと教室をあとにしている。にも関わらず、伸びすぎてリラックスしてしまった彰は、ほんわかな表情だった。その顔にヒロは筆箱しか入っていないスクールバッグを落っことした。
「……。キミはアレか?僕のリラックスタイムを邪魔立てしようってのか?そういうことなのか?」
彰は暗闇の視界で変わらぬポージングのまま語る。外の世界ではかすりも帰り支度を済ませ、彰の近くに寄ってきた。
「今キミがこの鞄を取り除くのであれば、僕は少額の慰謝料で手を打とう。いやしかし、まだこのような幼稚なことを続けるのであれば、僕にも考えがある」
「ヒロくん…何で彰くん一人で喋ってるの?」
「この鞄どかせばわかるよ」
言われるがままに鞄を持ち上げるかすり。これでもかと言わんばかりに目を見開く彰と視線がぶつかり、かすりは躊躇わずに鞄を叩き落とす。
その瞬間、豚の鳴き声が短く聞こえた。
「痛ぅ…。ヒロ、かすり、今度覚悟しとけよ」
「俺は早く帰りたいからしただけだぜ。ちんたらしてる彰が悪い」
「そうよ。気味悪くて怖い顔してる彰くんが悪い」
言われ放題の彰。彰も男である、ここで引かずに反撃の一手を繰り出そうと、鞄を持って口を開いた。
「ほんじゃな!今日は寄り道しないで早く帰りたいんだ!また明日ー」
と言って二人から逃げた。
その逃亡者の背に向かって二人は再開の言葉を送った。
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