かぜノ匂い

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かぜノ匂い

桜も散り欠け、緑に満たされようとしている春の季節。 賑やかな遊園地で、暖かく柔らかい空気がその場にいるもの全てを包み込む。 若い一組のカップルもそのうちの一つだった。 花の香り 香ばしいポップコーンの匂い 人の臭い そして、鉄のニオイ。 「えっ?」 一人の若い男は目を見張った。 目の前の人ごみの中で、動物があってはならないものを手に持っていたからだ。 しかしここは遊園地。 『着ぐるみ』姿は男も理解できていた。 けれど、手に持つ『鎌』には理解できなかった。 隣の彼女はその存在すら気づいていなかった。 そして笑いながら、一歩、また一歩と…。 『着ぐるみ』に近づいていく彼女を、 彼は…。  
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