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由美達が見たもの、それは先生達の笑顔だった。
この状況で笑うのはごく自然なことであるだろう。
しかし、由美と佐藤が一瞬の光の中で見た彼らの笑顔は、救助に対する安堵や喜びといった感情とはかけ離れているように感じられた。
どの先生もまるで何かを企んでいるような、ニヤニヤとした嫌らしい笑みを浮かべていたのだ。
由美は直感で何か不味いことが起きると感じていた。
「嫌な予感がする。念のためあのトイレに隠れましょ。
わたしは友達を何人か呼んでくるから」
「う、うん。わかった」
佐藤もそれが得策と考えたのだろう。
周りの男子と一緒にトイレへと向かった。
由美は闇に包まれ、ほとんど何も見えない体育館の中を走り回った。
ヘリの音はかなり大きくなっていた。
由美が数人の友達と合流し、トイレへ向かっている時、彼女はあることを思い出した。
「あ!しまった‥山田の奴も連れて来ないと!」
「アンタ達は先に行ってて!」
そう言い残し、即座に体育館の闇の中へと踵を返して行った。
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