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いきなりの言葉に驚いている少年をよそに、その人物は突如手を前に出した。
すると、地面を踏み締める音とともに、焦げ茶色をした毛で覆われた何かが姿を現す。
紫色の目で睨みつけ、黒く鋭い爪で今にも襲い掛かろうとしていた。
「ちょっ……なんでこんなとこに熊が!? 僕の思いが伝わるんなら、今回は見逃し――」
「ガォーーッ!!」
「うわぁッ!! 全く通じてない……」
少年の言葉の途中で、熊は大きな叫び声を出し、興奮状態に陥っているようだ。
その様子を見て、「仕方ない」と呟くと、彼はゆっくりと目を閉じた。
熊が今にも襲い掛かろうとしているのに、一体何をしようというのか?
すると、バサバサという、何かが羽ばたくような音が聞こえはじめ、上空を見ると数十匹の何かの姿が。
少年が目をパッと開くと、上空にいるものが一斉に鋭い嘴を向け、急降下し始めた。
その標的は熊――ではなく、マントを覆った人物。
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