白紙(エピローグ)

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俺は一人で街を歩いている。 勝手知った我が街を一人でだ。 否、その表現には誤りがあった。 俺は一人ですらない。 半分だ。一人の人間として半分。 蕪木在方や彼方のように一対でもなければ。 白峯巫女のように従順でもなければ。 弥栄紅のように純真でもなければ。 風間遥のように無垢でもなければ。 岳場友のように楽観でもなければ。 玉城胡桃のように精悍でもなければ。 殻ノ木ノ実のように直情でもなければ。 漣漣のように純愛でもなければ。 鉱金雀枝のように万能でもなければ。 宇賀嘉串のように豪胆でもなければ。 犬井已ミミのように専門でもなければ。 海原ラララのように閉鎖でもなければ。 三日月堂美園のように詠者でもなければ。 繰内ナヤミのように変動でもなければ。 不穏分子のように最悪でもなければ。 斎藤真のように最強でもない。 俺には何も特長がない。 人として不完全だから当然。 人として半分だから当たり前。 だったら――――半分を失った人間はどうすればいいんだろうか?
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