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彼は
「畜生、
くたばり損い奴」
といい、
犬は
うなっていた。
私は
「今晩は」
といったが、
老人は
ののしり続けていた。
そこで、
その犬が
何をしたのか、
と
彼に尋ねた。
彼は
私には答えず、
「畜生、
くたばり損い奴」
とだけいった。
彼が
犬の上に
身をかがめて、
何か首輪を
直しているところらしかった。
私は
声を高めた。
すると、
振り向きもせずに、
怒りを
押さえた調子で、
「こいつは
いつもがんばってやがる」
と答えた。
それから、
彼は
動物を引っぱって
外へ出た。
犬は
四足を
踏んばりながら
引きずられ、
うなっていた。
小説
「異邦人
(著・A・カミュ)」
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