11人が本棚に入れています
本棚に追加
半ば呆然と生徒を見送った眞乎が、ハッとしたように意味のない言葉を発した。
「えっと・・・うん、あれだね」
「どれ?」
「今の2人、あれでしょ?」
「だから、どれ」
「噂の転校生君達」
駆け上がっていった方向を指差して言う眞乎に、柳は黙って首肯した。
が、眞乎には1つ反論がある。
「カッコいくないじゃん!可愛いじゃん!綺麗じゃん!」
「誰も・・・カッコいいと言ってない」
「言ったトキに否定してよ!?」
「ヤダ」
膨れた眞乎を再び無視して、柳は未だ転校生達の行った先を見る辰の名を呼んだ。
「あ?」
「・・・知り合い?」
「そ~だよ!青目君の名前知ってたじゃん。何で!?」
復活した眞乎にも聞かれ、辰は言いにくそうに頭をかく。
が、黙っていても仕方ないと思ったのか、軽いため息をついた。
「眞乎、お前転校生の名前覚えてるか?」
「へ?あ~・・・うん。覚えてるよ、んっと・・・」
顎に手をあて、記憶(といっても昨日)を掘り起こし2人組の名前を思い出す。
隣の男子に聞いたのは・・・
「確か、黒蝶 悠君と紫葉 葵く・・・。・・・あれ?」
「そーゆーこった」
青目転校生君の名前は葵、つまり紫葉 葵。
そして、辰の苗字は、
紫葉
「親戚・・・」
「そう言った方が早ぇな」
「ほえ~・・・偶然ってあるんだねぇ。イトコかなんか?」
何気なく、ただの興味本位で聞いた何気ない質問に、
辰の表情が、一瞬曇った。
「さぁな。説明しづらいんだよ・・・だからもういいだろ」
流石のオチャラケ眞乎も、今の表情を見逃すほど甘くはない。
それは長く一緒にいたからかもしれないが、それは柳も同じようなことで。
「んじゃ・・・屋上でも行く?」
わざわざ聞くような、無神経・・・いや、“空気”の読めないようなことはしなかった。
「賛成だな。・・・次何だよ?」
「英文法」
「問題ねーな」
「んじゃ、行ってみましょう♪」
否定がない=柳は賛成。
ということで、3人組はサボるために屋上へと足を向けた。
あの2人組が、自分たちに大きく関わると、
夢にも思わずに。
.
最初のコメントを投稿しよう!