噂の転校生

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半ば呆然と生徒を見送った眞乎が、ハッとしたように意味のない言葉を発した。 「えっと・・・うん、あれだね」 「どれ?」 「今の2人、あれでしょ?」 「だから、どれ」 「噂の転校生君達」 駆け上がっていった方向を指差して言う眞乎に、柳は黙って首肯した。 が、眞乎には1つ反論がある。 「カッコいくないじゃん!可愛いじゃん!綺麗じゃん!」 「誰も・・・カッコいいと言ってない」 「言ったトキに否定してよ!?」 「ヤダ」 膨れた眞乎を再び無視して、柳は未だ転校生達の行った先を見る辰の名を呼んだ。 「あ?」 「・・・知り合い?」 「そ~だよ!青目君の名前知ってたじゃん。何で!?」 復活した眞乎にも聞かれ、辰は言いにくそうに頭をかく。 が、黙っていても仕方ないと思ったのか、軽いため息をついた。 「眞乎、お前転校生の名前覚えてるか?」 「へ?あ~・・・うん。覚えてるよ、んっと・・・」 顎に手をあて、記憶(といっても昨日)を掘り起こし2人組の名前を思い出す。 隣の男子に聞いたのは・・・ 「確か、黒蝶 悠君と紫葉 葵く・・・。・・・あれ?」 「そーゆーこった」 青目転校生君の名前は葵、つまり紫葉 葵。 そして、辰の苗字は、 紫葉 「親戚・・・」 「そう言った方が早ぇな」 「ほえ~・・・偶然ってあるんだねぇ。イトコかなんか?」 何気なく、ただの興味本位で聞いた何気ない質問に、 辰の表情が、一瞬曇った。 「さぁな。説明しづらいんだよ・・・だからもういいだろ」 流石のオチャラケ眞乎も、今の表情を見逃すほど甘くはない。 それは長く一緒にいたからかもしれないが、それは柳も同じようなことで。 「んじゃ・・・屋上でも行く?」 わざわざ聞くような、無神経・・・いや、“空気”の読めないようなことはしなかった。 「賛成だな。・・・次何だよ?」 「英文法」 「問題ねーな」 「んじゃ、行ってみましょう♪」 否定がない=柳は賛成。 ということで、3人組はサボるために屋上へと足を向けた。 あの2人組が、自分たちに大きく関わると、 夢にも思わずに。 .
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