吾輩は引きこもりである

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 吾輩は引きこもりである。 大学はやめていない。  暗い部屋の中、パソコンをつけた。 つい昨晩に登録したばかりの某動画サイトにアクセスした。 アニメのカテゴリの中から、ランキング第一位の動画をクリックした。 動画をバックにコメント流れる。  素人が作ったらしい動画のレベルに感心した。 よもや個人でこれほどのアニメができるとは。  吾輩は、この感動を分かち合いたいと思い、携帯を手に取った。 「もしもし、藤森か?」 四回目のコールが鳴る前に、友人である藤森の電話に繋がった。 彼は吾輩の友人である。 ついでに、大学で初めて出来た友人でもある。 「田之上?どうかした?」 藤森は言った。 田之上とは吾輩の性である。 親しいものにも、関係が疎遠なものからも、その名で呼ばれている。 「最近のアニメは凄いな。某動画サイト見たことあるか?あそこにあるアニメはすべてが手作りらしいぞ」 吾輩は言った。  感動をすべて言葉に乗せたいのだが、語彙力が乏しい故に百分の一も伝えることができない。 不甲斐ない自分に耐えながら、画面を見ながら携帯を握り、見えぬ電話相手に唾を飛ばしていた。 そうしているせいで気にならなかったのだが、電話口からの返答がない。 「どうしたんだ?」 吾輩は言った。
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