旅立ち

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うちらかな春の日差しの元、ライスシャワーを浴びながら歩く二人はこの世の幸福という幸福をまるで一人締めしている様に零れんばかりの笑顔を参列者に振りまいている 隣りで佇むコイツが今どんな顔してその様子を見ているのかそればかりが気になって、遠くから笑いかける実の姉にため息しか出てこない 奇しくも今日が誕生日のあたしは、未成年から卒業するのと同じように、隣りのコイツとも卒業しようと思う 昨日と何ら変わらないあたしは今日から罪を犯せば実名で報道されて、お酒も飲めて、その内選挙があれば投票を促すハガキがくるだろう 大して大人になってもいないのに、世間が周りのずっと大人の人たちが大人なんだからしっかりしろと、背中をグイグイ押してくる まだまだ子供でいたくても、まだまだコイツを好きでいたくても、ずっと子供ではいさせてくれなくて無理矢理大人にさせられる 昨日の私と今日からの私と何も変わらないのに、今日を最後の日と決めたのはあたしで 長い長い片思いから、幼なじみから卒業しようと思う
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