あたしとあいつ

3/7
753人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
ほんの少し勘違いしていたこともある。 お姉ちゃんと入れ替わる形で入学したあたしはことあるごとに先生から【百合さんは…。百合さんは…。】と比べられて悔しくて悔しくて近所の公園のジャングルジムのてっぺんで星を見ながら泣いてた時も、亮輔は何も言わずにそばにいてくれた あたしの怒りの矛先がお姉ちゃんに向かっても何も言わずに隣りにいてくれた 少し悲しそうにしながら だからかな…今日からちょうど4年前。 16歳の誕生日はあたしの失恋記念日 ただケーキを食べるだけの誕生日にたまたま部活が休みだった亮輔とリビングでケーキを食べていると、お姉ちゃんが帰ってきた 大学生になったお姉ちゃんは美人な上に化粧を施していつもよりずっと綺麗で、白いワンピース姿のお姉ちゃんを惚けて見てから顔を赤らめてワタワタしている亮輔はあたしが初めて見る姿だった 一瞬、目の前が真っ暗になった 胸の奥がズキズキ痛んで息が出来なくなるほど苦しかった ずっとお姉ちゃんに憧れていた亮輔は久しぶりに会ったお姉ちゃんに夢中で、その後から入ってきた彼氏の顔を見てあからさまに表情を変えた 二階に上がる二人を気にしながらもふらふらと明らかに気落ちして帰って行く姿を玄関で見送って、一人部屋で泣いた 隣りから楽しげに笑い合うお姉ちゃんとその彼氏の声を微かに聞きながら、布団を被って声を殺して泣いた 何もかも彼氏まで手に入れているお姉ちゃんは亮輔の心をいとも容易く奪って傷つけた 死に物狂いで入学した高校はお姉ちゃんと比べられるだけで、ケーキを食べた後部屋で告白しようと思っていた私の計画は悲惨な結果で空中分解した
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!