[人夢-はかなさ-]

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「委員長」 学ランをたなびかせ廊下を歩いていると呼び止められた。 「今朝の件ですが」 「何かわかったの?」 は、と草壁が差し出したのはホチキスで止められた何枚かの書類。 それを受け取り軽く目を通した。 「柳瀬 光?」 目に入った名前。 これがあの生徒の名。 「特に変わったこともないみたいだね」 不良というわけでもなさそうだ。 どちらかと言えば優等生になるような生徒だろう。 「…?」 めくっていた手を止める。 「…どういうこと?」 「柳瀬は保健室登校ということになっています。」 「いじめ?」 「いえ…柳瀬のことは誰も知りませんでした。」 「どういうこと?」 先ほどと同じ疑問文を眉をよせ口にする。 「柳瀬は」 かたん―― 「…っ」 つきり、と胸が痛む。 「は…っ、…は…」 もう何度味わっただろう。 苦しいはずなのになぜか笑いが出てくる。 「俺、しぶといなぁ…」 ぎゅ、と握り締めた胸元はシャツに皺ができていた。 (夢?あるよ。) (今日を生きること。)   
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