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「………」
湧き上がる怒りにも似た感情。
口内に残る苦い味が嫌で、唾を歩道に吐き出した。
それから間もなく襲ってくる切なさ。
当てつけだ。
わかってる。
ピンポーンピンポーンと容赦ない連打。
眠りの淵をさ迷っていた青木はがバリと仕方なく布団を退けた。
「あーっ!!くそっ!!」
加持なら幾らでも喜んで出てやるての!
ダンダンと乱暴な足音を立てて、ドアへ向かう。
その間中もチャイムは鳴る。
先日も下の階のおばさんに遠回しに注意された。
「ったく!!何すか!夜中に!」
開けたドアの向こうの南は、想像したより微妙な表情で、つい青木は横を通り過ぎるのを許した。
南はまだわからないが‥好きな男の好きな相手の男だから、青木にちょっかいを出すのかも知れない。
「……ビールっすか?」
諦め冷蔵庫を開ける。
うんとも寸とも言わない南を恨めしそうに、一度振り返り、テーブルにビールを置く。
どうせ、また広泰だ。
「…なぁ青木、テメェのしゃぶらせて?」
「…ぁあ!?」
素っ頓狂な声だった。
第一声目がそれか!?と。
グイッと伸びてきた南の足に股関を掴まれる。
「ちょっ…」
「ヘタなわけじゃねぇから」
「…いや…いいっす」
「別にヤレとか言わねーし」
「…ちょっ…南さん」
グイッと距離を縮められ、間近になった唇が
「お前だって、知ってんだろ?コーダイ、加持に手ぇだしたことあんの」
そう囁いて歪んだ。
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