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「……っ」
実際どこまでどんな風にかは知らない。
ただ2人の間に何かあったのは確かだ。
ガッといつの間にか青木の足は南の腹部を蹴りつけていた。
倒れた南の頭が屑かごにぶつかる。
しかし構わず青木は南の上に跨る。
「本当は殺してやりてぇーくらいっすから」
青木の地を這うような低い声。
普通なら泣きたくなるようだ。
しかし南には沸々と腹の中の何かを煮やすだけ。
「…それに、オレ、本当は加持以外どーでもいーんっす。加持以外に優しくするつもりもねーし」
ぐっと襟首を掴まれ、きつく睨まれた南。
例外無く。
まさに自分も青木にとっては本当にどうでもいい人間なのだ。
ぐっと今度は南が青木の手首を掴み、自分の上から退ける。
いちいち何にでも傷つく。
そうなったのは八幡が居なくなってから。
無言でそんな瞳で青木を見る。
「……あー‥」
ポリポリと旋毛らへんを掻きながら、青木はバツの悪そうな顔。
「…まぁ、ちょっと‥言い過ぎたとこもありますけど…」
何故に罪悪感を感じるのか。
きっと恋の温度が南と似ているからだ。
自分も、また…加持が居なくなったら。
この人みたいに彷徨うんだろう。
いいや、もう居ないかも知れない。
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