未 満

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塗り替えられたらいいのに。 あの人の体も記憶も。 腹いせ、まぁ、そうだろう。 名前が知られている広泰が絡まれることは少なくない。 追い掛けたが、姿は無く。 たまたま売られた喧嘩で腹いせ。 殴られ鼻血を出した顔面を鷲掴み、ガシャンと後ろのフェンスに押し付けた。 カエルの潰れたような呻き声。 倒れていた、もう1人がわたわたと逃げて行く。 後ろから襟首を掴んで引っ張り戻そうかと思ったが、急にバカらしくなって止めた。 加持の顔に八幡の顔に。 浮かんで。 その間にいる自分。 (…あ…、オレ) ちゃんと南さん、見てない。 だから電話に出ない南がどこに居るかも、わからなかった。
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