4820人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
「お待ちのお客様こちらのレジにどうぞ」
アタシは、レジで並んでいた男性に声をかけた。
「お願いします」
そう言って男性が差し出した本をスキャンする。
ピッ……ピッ……
(うへっ、このオッサン難しそうな本読むんだな)
まぁ、大概オッサン達は難しそうな本を持ってカウンターにやってくるんだが、この人はきっと営業マンなのだろうと思った。
《企業への戦略》
《営業は一日にして成らず》
持ってきた本がそれを教えてくれている。
「2380円になります」
出された1万円札を受け取りお釣りを渡した。
「ありがとうございました」
ダークグレーのスーツを着た男性に頭を下げると、ありがとう、と言って本を手に店を出ていった。
ありがとう。
礼が言えるなんて、いい奴じゃないか。
こういうとこで接客していると、いろんな人を見る。
金を払い商品を手にする人はお客様。
ありがとうを言うのは店側のアタシ達だ。
客は自分で金を出しているんだから言われて当たり前と思っているとこがあると思う。
アタシも働く前はそうだった。
お金払ってるのはコッチだよって……。
最初のコメントを投稿しよう!