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翌日彼がやって来た。
カウンターで納品伝票を振り分けているところに差し出された少年漫画の最新刊。
いらっしゃいませ、と顔をあげると、そこに彼が立っていた。
「昨日はありがとう。早速買いに来たよ」
そう言いながら内ポケットから長財布を取り出した。
「これ全巻揃えているんですか?」
「あ? ああ、読んだら面白くてさ、出るたびに買って読んでるんだ」
(やった! このオッサン読んでる)
「お子さんから勧められたとか?」
「いや、子供はいないから俺一人で読んでるよ」
(あれ?)
てっきり子供に勧められて読んでいるうちに自分がハマった口かと思ったら違った。
よくいるんだよ、そういうお客さんが。
この間も小学生の娘さんに面白いよと勧められ、読んだら続きが読みたくて9巻から18巻までを大人買いしていったお母さんがいた。
レジでそう話すお客さんに相槌を打ちながら、なかなかやるなその娘、と思ったもんだ。
自分の小遣いじゃすぐに揃えられなくても、親なら買える金を持っているとふんだんだろう。
違うか?
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