アタック

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  大概午後になると彼はやって来て、本を買っていく。   勿論毎日ではない。週に2回くらいってとこだろう。   小説だったり、難しいHOW TO本だったり、パソコンの本だったり、漫画だったり……。   本が好きなんだと思った。   小説コーナーで本を見ている彼を発見したアタシは、ハタキを持って傍に寄って行った。     「こんにちは」   「ああ、君か」   「今日は何買うんですか?」   「ん、別に決めてないよ。何か面白いのないかと思ってね」   「推理小説とか読みますか?」   ああ、と返事をした彼に、アタシはこの間読んだ本の事を教えた。     読んでいて犯人にムカついた事や、最後まで犯人を苦しめた刑事のカッコ良かった事を熱く語った。   最初はにこやかに聞いていた彼の表情が、次第に難しい顔になっていたのに気付いた時は、もうアタシの話も終盤だった。     「何か?」   じっとアタシを見ている彼に聞いてみた。     「君はアレだろう。映画の一番美味しいところを真っ先に話してしまうタイプだろう?」     …………?     「今の君の話で、その本は買わなくても内容が解ったよ……」   はっとして慌てて口に手を当てたアタシを彼は笑って見ていた。  
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