4820人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
それからというもの、彼と店内での僅かなお喋りが増えた。
「この間の君が勧めてくれた本は面白かったよ。他にも何かあるかい?」
彼の方から声をかけてくる事もある。
「これ、映画になった話なんですけど、映画は見た事あります?」
アタシの差し出した本のタイトルを見てから、映画を見たと彼は言った。
「エンディングは映画と原作ちょっと違うんですよ。アタシは原作のエンディングの方が好きなんです」
「へぇー」
じゃ、読んでみるかなとその本を手に持ち、再び彼は口を開いた。
「君は本が好きなんだね。俺も好きなんだ。いろんな世界がそこにあって、知識も得られる」
「あの、アタシ工藤っていいます」
「えっ?」
アタシは普段付け忘れている、【工藤】と書かれたネームプレートを見せた。
胸元に付いているソレを見て彼は笑顔で言った。
「面白いな」
(はぁ? アタシの名字はどこにでもあるけど?)
「俺も工藤って言うんだ」
「えっ? 親戚とか?」
「はははっ、本当に面白い人だな君は」
オッサン……、いや、工藤さんは笑った。
最初のコメントを投稿しよう!