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「ちょっと待ってて下さいね」
そう言ってアタシはカウンターに向かって走り出した。
カウンターにあったメモ用紙に自分の携帯番号を書き、彼の元に戻った。
「これ、アタシの携帯の番号です」
差し出した紙を見て、君の携帯は何処にあるんだ?、と聞かれ、ジーンズのポケットから取り出した。
「赤外線通信した方が早いだろう」
そう言って彼は自分の携帯を出し、アタシも慌てて通信設定をした。
彼の番号がアタシのメモリーに保存された。
「あの、名前なんていうんですか? アタシはサトミです。聡明の聡に美しいで聡美」
「俺は真実の真につかさで真司」
「よし、じゃあ電話下さいね。語りましょう」
「解った、連絡するよ」
彼はそう言うと本を手にカウンターに向かった。
(よっしゃー!)
一歩前進だ。
アタシは小さくガッツポーズをした。
少年漫画について語り合おうは、全くの口実。
思い付きだった。
仕方がない。他に考えられなかったんだから。
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