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アタシは本屋に向かい歩き出した。
このショッピングモール内にある本屋はかなり広いスペースを使っている。
新刊コーナーを見ると、手書きPOPで人気の小説を紹介しており、その色使いは目を引くものがあった。
買いたいモノが決まっていてやってくる客と、何かないかなと探しに来る客がいる中で、後者に対して目に止まらせないとその役割に意味が無くなるPOP。
これは真似させて貰おうなどと考えていた。
職業病なのか、平積みされている本の乱れが気になりついつい直してしまう。
客にもいろいろあって、手に取った本を元の場所に戻す人がいれば、何処でも一緒とそこらに置いてしまう人もいる。
そこらに置く客の道徳心にアタシは首を傾けたくなる。
せっせと乱れた本を直していると笑い声が聞こえた。
「君はこの店に転職したようだな」
振り向くと工藤さんがいた。
アタシは慌てて背筋を伸ばした。
「すまん、君に仕事をさせる程待たせてしまった」
「いや、なんていうか、職業病?」
アタシが答えると彼はまた笑い、そして言った。
「仕事熱心なのはいい事だよ。それよりこんな時間だ、腹減っただろう。メシを食いに行こう」
アタシは頷き1階にある和食の店に決め、一緒に歩き出した。
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