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店内で案内された席につき、出されたメニューを見て注文した。
オシボリで手を拭いた彼が口を開いた。
「で、あの漫画について語り合いたいって事だったね」
(ああ、それは口実なんだけどなぁ)
「最新刊読みましたか?」
語り合おうと言ってしまったのだから、話を振ってみた。
「ああ、読んだよ。面白かった。あの女の子の過去に年甲斐もなく泣けたよ」
「あ、アタシも休憩中に読んで泣けた! でも一番泣けたのはカルルの話。あれはマジで号泣しちゃった」
彼もその場面は忘れられないと言い、アタシは口実だった漫画の話にすっかり入り込んでしまっていた。
「君は本当にあの本が好きらしいな」
彼に言われて気付いた。
さっきからアタシばかりが喋っている。
「すいません……、なんかアタシばかり話してましたね」
そう言うアタシに、聞いていて面白いから構わないよ、と彼が言う。
「そういえば、工藤さんて……、なんか自分と同じ名字を呼ぶのって変……。真司さんて呼んでもいいですか?」
「それが呼びやすいならそれでいいよ」
「真司さんて何歳なんですか?」
「ん? 43だが?」
43。いいじゃん。悪くないじゃん。
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