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「な、何を言ってるんだ君は……」
向かい側からアタシに飛んできた飛沫を、オシボリで拭きながら彼は言った。
「真司さん、付き合ってる人いるとか?」
「いや、いな……はっ」
彼はしまった、という表情を見せた。
いると答えておけばアタシの申し込みを断れたのにと思ったのだろう。
正直なオッサンだ。ますます気に入った。
アタシは嘘つきは嫌いだから、これに関しても彼はポイントが高い。
「なんでこんなオッサンがいいんだ君は?」
「聡美ですって。
すぐに死んでしまうような年寄りじゃないし、その歳で独身って事はこの先も結婚する気無いと読みました。
年齢とともに落ちる精力からいって貴方がいいんです」
ポカーンとする彼。
「アタシ、結婚したく無いんですよ。相手が結婚したがりな人だったらダメなんです」
「だから俺か?」
「はい!」
彼はククッと笑い出し、やがて爆笑した。
(そんなに笑う事か?)
「解った。まずは友達になろう」
(はぁ? 友達?)
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