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「アタシは恋人がいいんですけど」
「何を言ってる。物事には順序っていうものがあるんだ。君だって28にもなればそれくらい解るだろう。
まずは友達だ。それが嫌なら他を探しなさい」
(なんだ? このオッサン。先生みたいな口調だ)
「だから、聡美だって。解りましたよ、友達からでいいですよ」
「なんだ? その膨れっ面は。不満があるならこの話はこれで終わりだ」
「あ、不満なんて無いです。いいです、これで。アタシもこれがいいと思ってましたからぁ」
友達からでいいと答えたアタシを見て、ニヤッと笑ったオッサンの顔をアタシは見逃さなかった。
このまま友達関係で振り切るつもりだな……。
そうはさせないから。
「じゃ、友達になったんだから、これからはアタシの事は君じゃなく聡美って呼んで下さい」
「君でいいじゃないか」
(恥ずかしいのか?)
「ほら練習が必要なら今やりましょ? 呼んで下さい、返事しますから」
「…………」
「ほらっ!」
「さ……」
「早くっ!」
「さ……、さぁ、帰るぞ!」
(この照れ屋さんめ!)
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