恋する女

2/13

4820人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
  数日後、彼が本を買いに来た。     「いらっしゃいませ」   「君のお勧めの本を買いに来たよ」     (だから、聡美だってば)     口を尖らせ睨みつけているアタシを見た彼の手が伸びてきた。     「客に対して君はそういう顔をするのか?」   伸びてきた手は、アタシの尖らせた唇をつまみ上下に動かした。     「時間から時間まで、君はここの店員だろ? 気をつけなさい」   「は……い」   「解ればよし」     アタシの返事を聞いてニコッと笑って彼が言った。     (なんだ?)      今、アタシの胸がキュンていった。   何?、これ……。     この先生みたいな口調のオッサンに、なんでキュンとかしちゃうんだ?     アタシ……、     M?     命令されるの好きだとか?   彼の指が触れたから?      ははっ、まさか。     これくらいの事でどうしたっていうんだ。   これ以上の経験なんて沢山あるからっ!   あんな事や、こんな事……してますけど、何か?     「ボーッとしてないで仕事しなさい」     アタシの横を通り過ぎる時に、そう声をかけて彼は出て行った。  
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4820人が本棚に入れています
本棚に追加