4820人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
数日後、彼が本を買いに来た。
「いらっしゃいませ」
「君のお勧めの本を買いに来たよ」
(だから、聡美だってば)
口を尖らせ睨みつけているアタシを見た彼の手が伸びてきた。
「客に対して君はそういう顔をするのか?」
伸びてきた手は、アタシの尖らせた唇をつまみ上下に動かした。
「時間から時間まで、君はここの店員だろ? 気をつけなさい」
「は……い」
「解ればよし」
アタシの返事を聞いてニコッと笑って彼が言った。
(なんだ?)
今、アタシの胸がキュンていった。
何?、これ……。
この先生みたいな口調のオッサンに、なんでキュンとかしちゃうんだ?
アタシ……、
M?
命令されるの好きだとか?
彼の指が触れたから?
ははっ、まさか。
これくらいの事でどうしたっていうんだ。
これ以上の経験なんて沢山あるからっ!
あんな事や、こんな事……してますけど、何か?
「ボーッとしてないで仕事しなさい」
アタシの横を通り過ぎる時に、そう声をかけて彼は出て行った。
最初のコメントを投稿しよう!