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おい、とかけられた声の方向に目をやり彼の顔を見た途端、忘れていた怒りが甦り、プイッと顔を元に戻すと自分の車に向かい歩き出した。
「怒っているのか?」
「別にぃ」
「あのあと、ちゃんとアンケートに答えて送信したが、あれじゃダメか?」
(えっ?)
知らんよ、そんなもん。
立ち止まり振り返ると彼が言った。
「さっきは悪かった。ちょっと言葉が乱暴だったのは謝る。
しかし、今週はホントに忙しいんだ。昼飯を食う暇も無かった」
アタシは彼の言葉を聞きながらバッグの中に手を突っ込み、ゴソゴソと携帯を探すが見つからない。
苛々したアタシはバッグを逆さまにした。
バッグからいろんなモノが落ちてきた。
その中にアタシの携帯があった。
いつもはジーンズのポケットに、マナーモードにして入れているのが、今日はムカついてバッグの中に放り込んだんだ。
携帯は着信を知らせるランプの点滅を繰り返していた。
(来てた……、返信)
「好きなアーティスト、コブクロ……、北島三郎じゃないんだ」
「悪いか!」
「ううん、悪くない」
「それよか拾うの手伝いなさい」
下に目をやるとアタシのバッグから落とされたモノを、ひとつひとつ拾ってバッグに入れていた彼がいた。
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