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店を出て振り向くと彼がいない。
(あれ? 一緒に出てきたんじゃないの?)
もう一度中に入ると、彼はハードカバーの並ぶ棚の前で腕を組んで立っていた。
「本を買うならうちでお願いします」
小さな声で彼に言った。
「ああ、すまん。君と一緒にいたんだったな」
(そんなに存在薄いのかよ……)
やっぱり女らしいカッコをして来れば良かったと思った。
本屋を出て居酒屋に向かう。
隣を歩く彼はジーンズにTシャツを着ていた。
私服姿を見るのは初めてで、スーツの時より若く見える。
はっきり言って30代でも通りそうだ。
居酒屋につき、中に入ると店員に案内された。
奥に並ぶ個室風の小上がり。掘ごたつになっているからジーンズの足に優しい。
おしぼりを持ってきた店員に、まずはビールを注文してメニューを開く。
「何食べようかな、鳥串いいな。
あ、このラーメンサラダっていうのもいいかも。刺身もなきゃね」
「楽しそうだな」
「だってデートだもん」
「はぁ?」
彼の顔色が変わった。
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