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やっと仕事が終わった。
更衣室のロッカーの中から、バッグと手提げバッグを取り出す。
手提げバッグの中には、料理の本と買ったばかりのエプロンが入っている。
仕事が終わった事を彼にメールすると、電話がきた。
これから会社に戻り書類を提出したら帰れるとの事。
彼のマンションの近くにあるスーパーの駐車場で待ち合わせをした。
一緒にスーパーで買い物をする姿を想像しながら車を走らせる。
『奥さん、この大根安くしとくよ!』
あれ? あははっ。そりゃ八百屋か。それに奥さんじゃないや。
カートを押す彼と並んで歩くアタシ。
ウキウキしちゃう。
スーパーの駐車場に着いたアタシは、車内を明るくして料理の本を開いた。
今日は何を作るんだろうか?
アタシはカレーは作れる。他には目玉焼き、野菜炒めは作れるが水気が多いベチャッとした出来上がりになる。
ひとりで考え事をしていると窓を叩く音に気付き、目をやると彼が立っていた。
エンジンを切り車を降りると、スーパーの入り口に向かう彼のあとを追った。
「真ちゃん見て。本買ったんだ。今日何作る?」
そう言って料理の本を彼に見せた。
「おもてなしの料理……、の前に初心者向けの本にした方が良かったんじゃないのか?」
(ありゃ、ダメか……)
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