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ジャージからジーンズに履き替えたあたりは、父とは違いホッとした。
ふたりで部屋を出た。沈みかけた夕日が綺麗で、それを眺めながら歩いた。
隣に自分が好きな人がいて、何もなくただ歩くのも悪くないと思った。
彼の大きな手に自分の手を絡めると、この歳で手を繋ぐのはちょっと、と離そうとする。
「ダメ! 離しちゃ」
ギュッと握ると、諦めたのかそのまま握り返してきた。
手を繋いだのも初めて。
たったこれだけの事に幸せを感じるなんて、自分で自分が可愛いと思った。
「真ちゃん、あそこに公園ある。ねぇ、あの公園のベンチで夕日見ようよ」
彼の腕を引いて公園に入った。
公園の中にあるふたつのベンチのうち、ひとつには老夫婦が座り、その足元に飼い犬だろう、赤い首輪をした柴犬が座っていた。
犬に向かい笑顔で語りかけているふたりを見ていると、そこだけ穏やかな空気に包まれているような気がした。
少し離れたベンチに腰掛け沈んでいく夕日を眺めた。
傍にいる事に心地良さを感じる。
いつまでも一緒にいたい……。
触れる彼の腕から伝わるぬくもりをずっと感じていたいと思った。
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