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「あの人。グレーのスーツ着たハゲの隣に座ってる人」
「え? あの眼鏡?」
「そっちの隣じゃなくて反対側」
藍子に言われた方の男を見ると、30歳は過ぎているだろうと思われる男が座っていた。
当時23歳のアタシ達にしたら、30過ぎているともうオッサンって感じがしていた。
(うへっ、全然アタシのタイプじゃないわ)
アタシの嫌うタイプの男でも、藍子は声をかけられた事が嬉しいようだった。
「で、どうすんの?」
「行ってくる。ご馳走してくれるって言ってたし、もう行くって返事しちゃったもん」
(バカじゃないの?)
新しいビールを持ち、藍子はその男の傍に行くと何やら耳元に話しかけている。
男も笑顔で答えてる。
その男の笑顔はスケベ心丸出しに見えた。
此処に来る時は一緒だった藍子は、帰りはアタシの車に乗っていなかった。
どこがいいんだ? あんなスケベそうな奴の。
明らかに藍子の身体が目的だろう……。
「バッカじゃないのぉ!」
アタシは声に出していた。
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