28歳

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  「あの人。グレーのスーツ着たハゲの隣に座ってる人」    「え? あの眼鏡?」   「そっちの隣じゃなくて反対側」     藍子に言われた方の男を見ると、30歳は過ぎているだろうと思われる男が座っていた。     当時23歳のアタシ達にしたら、30過ぎているともうオッサンって感じがしていた。     (うへっ、全然アタシのタイプじゃないわ)     アタシの嫌うタイプの男でも、藍子は声をかけられた事が嬉しいようだった。     「で、どうすんの?」   「行ってくる。ご馳走してくれるって言ってたし、もう行くって返事しちゃったもん」     (バカじゃないの?)     新しいビールを持ち、藍子はその男の傍に行くと何やら耳元に話しかけている。     男も笑顔で答えてる。     その男の笑顔はスケベ心丸出しに見えた。      此処に来る時は一緒だった藍子は、帰りはアタシの車に乗っていなかった。     どこがいいんだ? あんなスケベそうな奴の。   明らかに藍子の身体が目的だろう……。     「バッカじゃないのぉ!」   アタシは声に出していた。  
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