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――今日から日記を書くように医者に言われた。
とにかく日記なんて今までの人生で一度として付けた事が無い。
最初は自分の事を書けと医者に言われたから自分の事について書く。
自分自身に自己紹介をするようで気が向かない。
男だ。
結婚している。妻は妙子。
職業は郵便局員。
昔から妙な潔癖症に悩まされている。
幼い頃から何よりも恐ろしい程に水が怖い。
水
小学生の頃だったろうか。プールの授業の時。
あの広い水溜まりが嫌だった。プールサイドに溢れてくる水が足に触れるだけでも嫌だ。
気持ちが悪い。
その頃から私は水に対して異常な恐怖を抱くようになった。
あの留まって流れる事の無い水には微生物の大群がひしめきあいうごめいていることを想像してしまう。
そんな水に浸かる事はおろか触れる事だけで汚い水に身体が汚染されてしまうようだ。
プールの授業で私は気を失ったのだ。
あの水は私に侵入し汚物を産み付けているように感じた。
それから私は一度もプールに入った事は無い。
プールに入っている人を汚いと思った事は無い。
水が汚いのだ。
その潔癖症は日に日に悪くなっていった。
まず風呂だ。
流れる水には汚いと感じた事は無い。
しかし浴槽に溜まった水は怖かった。
私は留まって淀んだ水が嫌だ。
あの水の中には何かが潜んでいるように思えた。
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