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その少年は浅い眠りから覚める少し前から、その異変に気付いていた。
異変といっても小さなもので、ただ、握っていた手の感触に違和感を感じたのだ。
少年は、彼にとって幼なじみであり恋人である人と一緒に眠っていた。
いや、恋人と眠っていたからといって"そういうこと"ではない。
何がそういうことかと聞かれると困るが、そういうことではないのだ。
少年は、熱を出し寝込んでいた彼女の看病を必死に行い、恋人と手を繋ぎながら寝てしまっていた、という。
そう、何と言うかピュアな感じなのだ。
だから決してそういうことではない。
一体何のことを言っているのかは、出来れば察して頂きたい。
「…………お前、誰?」
ピュアな感じの少年は、目を覚まし、よーく周りを見回した後に、自分が手を握っていた少女に尋ねた。
普通、自分の恋人であるという人に向かって、誰?等と言う訳はない。
つまり、手を握っていたはずの恋人がいつの間にか見ず知らずの少女になっていたのだ。
ピュアな少年は、未だに寝ている少女の顔をまじまじと見つめるが、やはり知らない顔だ。
「……お前"達"誰だよ?」
ピュアな少年はさっきの言葉を言い換えて呟いた。
そう、自分といつの間にか手を繋いでいた少女は複数人いたのだ。
しかも四人も。
この何とも説明しずらい状況を説明するために、時間を少しだけ遡りたいと思う。
それでも説明出来るか不安だが、ともかく遡ってみる。
そう、あれはいつのことだろうか…………
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