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少年、神月一輝(かみづき かずき)は普通の高校生である。
ちなみに二年生だ。
少年は、自分に宛てがわられた部屋のベッドの中で、すぅすぅと気持ちが良さそうに眠っていた。
窓からはカーテンによって弱められた日光が、まるで木漏れ日のように差し込み、外では小鳥がチュンチュンと鳴き、
「朝だね」
「気持ちが良いね」
と、爽やかな朝を演出する。
そんな朝の中、少年、一輝もまた爽やかに眠っていた。
それはもう健やかな寝顔だった。
だがそこに邪魔が入る。
にっくき目覚まし時計である。
時計の上部に付いている小さなハンマーが金属を打ち鳴らすという、アナログな形式の音が部屋中に鳴り響くと、一輝は不快そうに「ん~~」と唸る。
と同時に、時計の上部にあるスイッチを叩くのだが、音は止まらない。
そのことに一層不快になり、唸り声に寝返りをプラスして目覚まし時計をバシンバシンと叩くが一向に音は止まらない。
なん…で……?
少し覚醒し始めた意識で考え始めるが、寝ぼけたままでは考えがまとまらず、壊れたという可能性すら思いつかない。
音は鳴り続け、やがて不快感がピークに達すると、一輝は目覚まし時計を掴み壁に向かって投げ付ける。
ドンッと音がすると、たまたま衝撃で時計の電池が外れ、音が止まった。
一輝はそのことに気を良くすると、寝返りを一度打ちむにゃむにゃと睡眠を再開する。
いわゆる二度寝というやつだ。
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