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「ハイハイ、一輝、起きて~朝ですよ~」
邪魔をしたのは、フライパンにおたまを打ち付けながら入ってくる、お前はいつの時代のラブコメだ、という感じの少女である。
彼女は、式野命緒(しきの みお)という一輝の幼なじみだ。
「ほら、起きなさいって」
その幼なじみは、セミロングの髪を揺らしながら一輝に近寄るとその頭の上でフライパンとおたまを大音量で打ち鳴らす。
うん、何と言うかすごくベタである。
幼なじみが朝起こしに来てくれる(ベタ)しかもおたまとフライパンで(ベタ)
という、かなりベタな展開に対し、一輝は布団を頭まで被って丸くなることで返す。
あまりにもうるさかったための行動であるが、これも少しベタである。
「起きなさいって、遅刻しちゃうよ」
そう言って、布団を剥がしにかかる命緒。(ベタ)
「う~、あと五分だけ~」
と言って布団を離さない一輝。(ベタ)
そんなベタベタな展開を繰り返すこと一分、ついに頭に来たのか命緒はおたまを振り上げる。
「あぁもう!早く起きなさいってば!」
振り下ろす目標物は、フライパンではなく少し布団からはみ出していた頭だ。
次の瞬間、部屋に鈍い音と、少し遅れて叫び声が木霊した。
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