8人が本棚に入れています
本棚に追加
「いってー!何すんだよ!」
「な、何って!一輝がいつまでたっても起きないから起こしてあげたんでしょー!」
一輝は、魚のように跳ね起きると命緒に詰め寄り、命緒は一輝の予想していたよりも大きな叫び声と行動に、たじろぎつつも負けないように反論する。
「だからって、おたまでフルスウィングすることないだろ!」
「うっ!いいでしょべつに!」
「べつにって……はぁ~、冬歌(ふゆか)だったらもっと優しく起こしてくれんのになぁ」
一輝のその言葉に、命緒の表情が一変した。
さっきまでは、あっちょっとやり過ぎちゃったかも、どうしよ……う~ん怒ってごまかしちゃえ!みたいな表情(どんな表情?)だったのが、今は、もう普通に怒っていらっしゃった。
「何よそれ!せっかく起こしに来たのに何でそんなこと言うのよ!」
命緒は顔を真っ赤にすると、両手で一輝をガンガン殴った。
自分では女の子らしく、ぽかぽかという擬音がつくような殴り方をしていたつもりだったが、いかんせん両手にはおたまとフライパンを持っているのである。
そんな金属で殴れば、ぽかぽかではなくガンガンと音がするのは当然であるし、それはすごく痛かった。
「痛!夏芽(なつめ)痛いって」
最初のコメントを投稿しよう!