Act.1 館の主

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「やあっ! やだっ、離して!」  硬い胸板を押して、身を捩(よじ)りその腕から逃げ出そうと試みる。  でも宗也の腕の力は強くて……。  私は初めて男と女の力の差というものを味わった。 「何が『嫌』だよ。お前自分で気づいてないのか?」 「え……?」  嘲るような声音に、私は眉を寄せて宗也の顔を見上げた。  真っ先に形の良いバランスの取れた顎が見え、その先にある目にたどり着く。  間近で見て、初めてその目が茶色いことに気付いた。  その目は、さっきの声と同じ様に私を嘲っている。  
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