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Act.2 婚約者候補
「一時間十ニ分の遅刻です。言い訳は有りますか?」
淡々とした口調で言ったその女性は、冷ややかな眼差しで私を見下ろした。
宗也に目的地であるメイド館まで連れてきてもらうと、館の前で待っていたこのシンプルなデザインのメイド服に身を包んだ女性にいきなり叱られた。
誰なのかは分からないけど、きっとこのメイド館の長的存在なんだろう。
なんか偉そうだし……。
三十代後半と思われるその女性は綺麗な顔立ちをしている。
でも、つり上がったまなじりと少し下がり気味の口角の所為で神経質そうにも見えた。
そしてその雰囲気を裏付けるかのように、結い上げた黒髪には歳のわりにかなり白いものが混じっているのが見える。
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