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嘘つけ。
「いいなさい」
「だから俺は知らないって……」
「天才ハッカークラスのあんたがよく言うわ」
「……あまり口外したくないな……」
「幸い聖奈と東也はデートに行ってるし、ここには聞き耳を立てる人物はいないわ」
私がそう言うと、目線だけで周囲を見回す湊谷。
ここでは問題があるのかしら?
「何処で誰に聞かれてるとも知らん。移動しよう」
「まぁ、いいわ」
そこまで深刻な話かどうかは知らないけど、私は湊谷の案に乗る事にした。
人気のない屋上。
ほんの少しだけ傾いた太陽は未だ燦々と頭上で輝いている。
「さて、小此木千百合に関しての事だったね」
そうよ、それを聞くためにこんな場所まで来たんだから。
「そうよ。早く教えなさい」
「……個人情報、本当に情報しか知らないが……」
少しばかり湊谷の口が重いような気がする。
「千百合の両親は既に他界している。現在は、親戚の家に厄介になっているらしい。肉親は、妹が一人だが……」
「どうかしたのよ」
「……妹は何らかの病気で入院しているらしい。親戚との仲もあまり良くないらしい」
「つまりは?」
「……入院費を彼女自身で稼いでいるらしい。親戚は一切資金援助を行ってはおらず、また両親が残した資産も無い為、バイトで賄っているらしい」
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