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そうして今になる。
銀春火。男はそう名乗った。全身黒ずくめで、鼻まで覆うマスク、表情の読めないサングラス、足元まである長いコート。それと、そんな格好にはあまり似合わないと思われる、後ろの腰くらいまである一つに纏められた長い髪の毛。
「春火、これから護衛を頼む私の親戚の子だ。期限まで宜しく頼む」
叔父さんが僕を紹介する。だけど、『護衛』、嫌いな言葉。それが僕の周りの事になるなら尚更。何でわざわざ要人でもない僕にそんなものが必要になるのか。全く見当も付かない。
「ほら、挨拶して」
「水無月刹那です」
叔父さんに促されて名乗る。その時に不機嫌さが声に出たみたいで、叔父さんが渋い顔をして見てきた。
「イマイチ状況は飲み込めないけど、よろしく」
言葉のあとに右手を差し出す。
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