👑変わらないもの

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やすは、いつの間にか変わった。 幼い頃は、よく 「「テニス教えてあげるよっ」」 って、笑いながら楽しそうに言ってたのに今じゃクールっていうか… 『…本当にお気楽ちゃん…』 「誰がお気楽だよ」 『ぎゃっ!!!』 いつの間に来たのか、やすはあたしの後ろに立っていた。 「情けない声出さないでよ」 そう言いながら、あたしの隣に腰を下ろす。 『練習は?』 少し、どきどきしながら聞くと 「あんまり、汗かきたくないから…。休憩」 『……』 やっぱり変わったなぁ。 あの頃のやすは、汗かきながら楽しそうにボール追いかけてたっけ…。 「何、考えてんの?」 ずぃっと顔をのぞかれ、顔が火照ったのがわかった。 『べっ、別に何にも…ただ…』 「ただ?」 『ただ…、変わったなぁと思って…』 ふわっと初夏の生温い風が吹いた。 「誰が…?」 『やすがだよ…』 やすを見ると、涼しい目をしながら 「変わったのは比奈佳だよ」 『…ぇ…』 やすに声をかけようとすると 「季楽なにしてんだよ。早くこっちこいよー」 一斗があたしの言葉を、遮った。 「はぁ。じゃあ、行くわ。明日青学と試合だし。暗くなる前に帰れよ」 『女の子1人で帰れと?』 やすは、少し考えてから 「…気をつけて帰れよ」 それだけ言うと、コートに向かって歩いていく。 『あ、明日がんばってね!!』 そう言うと手だけ振って、やすは行ってしまった。
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